ないだらうが、気違ひだの白痴だのと、思ひ込むと誰はばからずそれを平気で言ひ出すもんだから、妙な結果になつてしまふ事もある。みんな馬鹿だ。馬鹿ばつかりだ。あなただつて馬鹿だ。叔父上があなたを私のところへ寄こしたのは、淋しいだらうからお話相手、なんて、そんな生ぬるい目的ぢやないんだ。私の様子をさぐらうと、――」
「いいえ、ちがひます。将軍家はそんないやしい事をお考へになるお方ではございませぬ。」
「さうですか。それだから、あなたは馬鹿だといふのだ。なんでもいい。みんな馬鹿だ。鎌倉中を見渡して、まあ、真人間は、叔父上の御台所くらゐのところか。ああ、食つた。すつかり食べてしまつた。私は、蟹を食べてゐるうちは何だか熱中して胸がわくわくして、それこそ発狂してゐるみたいな気持になるんだ。つまらぬ事ばかり言つたやうに思ひますが、将軍家に手柄顔して御密告なさつてもかまひません。」
「馬鹿!」私は矢庭に切りつけました。
ひらりと飛びのいて、
「あぶない、あぶない。鎌倉には気違ひがはやると見える。叔父上も、いい御家来衆ばかりあつて仕合せだ。」さつさと帰つておしまひになりました。
闇の中にひとり残されて、
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