。以上は、わが武勇伝のあらましの御報に御座候えども、今日つらつら考えるに、武術は同胞に対して実行すべきものに非ず、弓箭《きゅうせん》は遠く海のあなたに飛ばざるべからず、老生も更に心魂を練り直し、隣人を憎まず、さげすまず、白氏の所謂、残燈滅して又明らかの希望を以て武術の妙訣《みょうけつ》を感得仕るよう不断精進の所存に御座候えば、卿等《けいら》わかき後輩も、老生のこのたびの浅慮の覆轍《ふくてつ》をいささか後輪の戒となし給い、いよいよ身心の練磨に努めて決して負け給うな。祈念。



底本:「太宰治全集5」ちくま文庫、筑摩書房
   1989(平成元)年1月31日第1刷発行
底本の親本:「筑摩全集類聚版太宰治全集」筑摩書房
   1975(昭和50)年6月〜1976(昭和51)年6月
入力:柴田卓治
校正:夏海
2000年11月17日公開
2004年3月4日修正
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