そう思い込ませる。やはり私は辻音楽師だ。ぶざまでも、私は私のヴァイオリンを続けて奏するより他はないのかも知れぬ。汽車の行方《ゆくえ》は、志士にまかせよ。「待つ」という言葉が、いきなり特筆大書で、額《ひたい》に光った。何を待つやら。私は知らぬ。けれども、これは尊い言葉だ。唖の鴎は、沖をさまよい、そう思いつつ、けれども無言で、さまよいつづける。



底本:「太宰治全集3」ちくま文庫、筑摩書房
   1988(昭和63)年10月25日第1刷発行
底本の親本:「筑摩全集類聚版太宰治全集」筑摩書房
   1975(昭和50)年6月〜1976(昭和51)年6月刊行
入力:柴田卓治
校正:小林繁雄
1999年11月22日公開
2005年10月24日修正
青空文庫作成ファイル:
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