て下さい。私も俗界を離れます。きょうはいいお天気ですが、風が強いです。偉大なる自然! われ泣きぬれて遊ばん! おわかりの事と思う。きょうのこの手紙、よくよく味わい繰返し繰返し熟読されたし。有難《ありがと》うよ、マサ子ちゃん※[#感嘆符二つ、1−8−75] がんばれよ、わがいとしき妹※[#感嘆符二つ、1−8−75]
 では最後に兄として一言。
[#ここから2字下げ]
相見ずて日《け》長くなりぬ此頃は如何に好去《さき》くやいぶかし吾妹《わぎも》
  正子様[#地から2字上げ]一夫《かずお》兄より」
[#ここで字下げ終わり]
 まず、ざっと、こんなものだ。一夫兄よりなんて、自分の名前に兄を附《つ》けるのも妙な趣向だが、とにかく、これは最後の万葉の歌一つの他は、何が何やらさっぱりわからない。ひどいものだと思う。真似《まね》して書こうたって、書けるものではない。実に、破天荒とでもいうべきだ。けれども、西脇一夫氏という人間は、決して狂人ではない。内気なやさしい人なんだ。あんないい人が、こんな滅茶苦茶《めちゃくちゃ》な手紙を書くのだから、実際、この世の中には不思議な事があるものだ。マア坊が「意味教え
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