すぐここへ来たのだそうである。丸顔で色が白く、まつげの長い二重瞼《ふたえまぶた》の大きい眼の眼尻が少しさがって、そうしていつもその眼を驚いたみたいにまんまるく※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]って、そのため額に皺《しわ》が出来て狭い額がいっそう狭くなっている。滅茶苦茶《めちゃくちゃ》に笑う。金歯が光る。笑いたくて笑いたくて、うずうずしているようで、なに? と眼をぐんと大きく※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]って、どんな話にでも首をつっ込んで来て、たちまち、けたたましく笑い、からだを前こごみにして、おなかをとんとん叩《たた》きながら笑い咽《むせ》んでいるのだ。鼻が丸くてこんもり高く、薄い下唇《したくちびる》が上唇より少し突き出ている。美人ではないが、ひどく可愛い。仕事にもあまり精を出さない様子だし、摩擦も下手くそだが、何せピチピチして可愛らしいので、竹さんに劣らぬ人気だ。

     3

 君、それにつけても、男って可笑《おか》しなものだね。そんなに好きでもない女の人には、カクランだの、ハイチャイだの、ばかにしたような綽名をどしどしつけるが、いいひとに対しては、どんな綽
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