後の顔色をうかがった。
「直しておやり。」越後も食事がすんだらしく爪楊枝《つまようじ》を使いながら、にやにや笑って言った。どうも、けさは機嫌《きげん》がよすぎて、かえって気味が悪い。
娘さんは顔を赤くして、ためらいながらも枕元に寄って来て、菊の花をみんな花瓶《かびん》から抜いて、挿し直しに取りかかった。いいひとに直してもらえて、僕はとても嬉《うれ》しかった。
越後はベッドの上に大きくあぐらを掻《か》いて、娘さんの活花《いけばな》の手際《てぎわ》をいかにも、たのしそうに眺めながら、
「もういちど、詩を書くかな。」と呟いた。
下手な事を言って、また、呶鳴《どな》られるといけないから、僕は黙っていた。
「ひばりさん、きのうは失敬。」と言って、ずるそうに首をすくめた。
「いいえ、僕こそ、生意気な事を言って。」
実に、思いがけず、あっさりと和解が出来た。
「また、詩を書くかな。」ともう一度、同じ事を繰り返して言った。
「書いて下さい。本当に、どうか、僕たちのためにも書いて下さい。先生の詩のように軽くて清潔な詩を、いま、僕たちが一ばん読みたいんです。僕にはよくわかりませんけど、たとえば、モ
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