呼びとめたら、
「失礼ですけど、ほうりますよ。これは、ひばりから、たのまれたんです。僕からじゃありませんよ。」と君が、颯《さ》っと赤い表紙の可愛い辞典を投げてやったところなんかは、やっぱりあざやかなものだった。僕は、ひそかに君に敬服した。竹さんは、君の清潔な贈り物を上手に胸に受けとめて、
「おおきに。」と、君に向って、お礼を言ったね。君が何と言ったって、竹さんは、君からの贈り物だという事を知っているのだ。旧館のほうに歩いて行く竹さんのうしろ姿を眺《なが》めながら、君は溜息《ためいき》をついて、
「危険だ、あれは危険だ。」とひどく真面目《まじめ》に呟《つぶや》くので、僕は可笑《おか》しかった。
「危険なもんか。真暗い部屋にたった二人きりでいたって大丈夫なひとだよ。僕は、もう試験ずみだ。」
「君は、とんちんかんだからねえ。」と僕をあわれむような口調で言って、「君には美人、不美人の区別がわからんのじゃないか?」
僕は、むっとした。君こそ、なんにも、わからないくせに。竹さんが君に、そんなに美しく見えたとしたら、それは、竹さんの心の美しさが、君の素直な心に反映したのだ。冷静に観察すると、竹さん
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