知ってるの?」と下手な質問さえ飛び出して、
「君の手紙で知ってるじゃないか。」
「そうか。」
 と二人で大笑いしたっけね。
「マア坊だって事、すぐにわかった?」
「ひとめ見てわかった。予想より、ずっと感じがいい。」
「たとえば?」
「しつこいな。まだ気があるんだね。予想してたほど、下品じゃない。ほんの子供じゃないか。」
「そうかしら。」
「でも、わるくない。骨の細い感じだね。」
「そうかしら。」
 僕は、いい気持だった。

     2

 マア坊が細長い白い花瓶を持って来た。
「ありがとう。」と君は受取り、無雑作に花を挿《さ》して、「これは後で、竹さんにでも挿し直していただくんだな。」
 と言ったが、あれは少し、まずかったぜ。君がすぐにポケットから、れいの小さい辞典を取り出してマア坊にあげても、マア坊はそんなに嬉しそうな顔もせず、黙って叮嚀《ていねい》にお辞儀をして、すたすた部屋を出て行ったが、あれはやっぱりマア坊が少し気を悪くした証拠だぜ。マア坊は、あんな、よそよそしい叮嚀なお辞儀なんかするひとじゃないんだ。でも君には、竹さんの他《ほか》のひとは、てんで問題じゃないんだから仕様が無
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