文章ヲ研究シ、シカシテ、我輩ノ答ヲ、我輩ノ能力ノ最大ヲ致シテ書キシタタメルデアロウ。
君ノ健康ヲ熱烈ニ祈ル。我輩ノ貧弱ニシテ醜悪ナル文章ヲ決シテ怒リ給ウナ。
3
つくしのあの奇怪にして不可解な手紙に較《くら》べて、このほうは流石《さすが》にちゃんと筋道がとおっている。けれども僕は、読みながら可笑《おか》しくて仕様が無かった。固パン氏が、通訳として引っぱり出される事をどんなに恐怖し、また、れいの見栄坊《みえぼう》の気持から、もし万一ひっぱり出されても、何とかして恥をかかずにすまして、助手さんたちの期待を裏切らぬようにしたいと苦心|惨憺《さんたん》して、さまざま工夫をこらしている様《さま》が、その英文に依《よ》っても、充分に、推察できるのである。
「まるでもうこれは、重大な外交文書みたいですね。堂々たるものです。」と僕は、笑いを噛《か》み殺して言った。
「ひやかしちゃいけません。」と固パンは苦笑して僕からその便箋をひったくり、「どこか、ミステークがなかったですか?」
「いいえ、とてもわかり易《やす》い文章で、こんなのを名文というんじゃないでしょうか。」
「迷うほうのメイブ
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