自分のベッドの引出しから蝋燭《ろうそく》を捜し出して、それに点火して枕元《まくらもと》に立て、ベッドの上に大あぐらをかいて自分のスリッパの修繕に一生懸命である。
「ひどい風ですね。」
 と、固パンが、妙に笑いながら私たちのほうへやって来た。固パンが、他人のベッドのところへ遊びに来るなんて、実に珍らしい事であった。

     2

 蛾《が》が燈火を慕って飛んで来るように、人間もまた、こんな嵐の夜には、蝋燭の貧しげな光でもなつかしく、吸い寄せられて来るのかも知れない、と僕は思った。
「ええ、」僕は上半身を起して彼を迎え、「進駐軍も、この嵐には、おどろいているでしょう。」と言った。
 彼はいよいよ妙に笑い、
「いや、なに、それがねえ、」と少しおどけたような口調で言い、「問題はその進駐軍なんです。とにかく君、これを読んでみて下さい。」そうして、僕に一枚の便箋《びんせん》を手渡した。
 便箋には英語が一ぱい書かれている。
「英語は僕、読めません。」と僕は顔を赤くして言った。
「読めますよ。君たちくらいの中学校から出たての年頃が一ばん英語を覚えているものです。僕たちはもう、忘れてしまいました。
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