デカダン抗議
太宰治
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)遊蕩《ゆうとう》
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(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「てへん+毟」、第4水準2−78−12]
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一人の遊蕩《ゆうとう》の子を描写して在るゆえを以《もっ》て、その小説を、デカダン小説と呼ぶのは、当るまいと思う。私は何時でも、謂《い》わば、理想小説を書いて来たつもりなのである。
大まじめである。私は一種の理想主義者かも知れない。理想主義者は、悲しい哉《かな》、現世に於《お》いてその言動、やや不審、滑稽の感をさえ隣人たちに与えている場合が、多いようである。謂わば、かのドン・キホオテである。あの人は、いまでは、全然、馬鹿の代名詞である。けれども彼が果して馬鹿であるか、どうかは、それに就《つ》いては、理想主義者のみぞよく知るところである。高邁《こうまい》の理想のために、おのれの財も、おのれの地位も、塵芥《ちりあくた》の如く投げ打って、自ら駒を陣頭にすすめた経験の無い人には、ドン・キホオテの血
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