はなやかな空想でせいぜい胸をふくらませて置いたほうがよい。どうだ。(手紙というものは、なぜおしまいに健康を祈らなければいけないのか。頭はわるし、文章はまずく、話術が下手くそでも、手紙だけは巧い男という怪談がこの世の中にある。)ところで僕は、手紙上手であるか。それとも手紙下手であるか。さよなら。
これは別なことだが、いまちょっと胸に浮んだから書いておく。古い質問、「知ることは幸福であるか」
佐野次郎左衛門様[#地から3字上げ]馬場数馬。
二 海賊
[#ここから5字下げ、本文よりひとまわり大きい太ゴシック体]
ナポリを見てから死ね!
[#ここで字下げ終わり]
Pirate という言葉は、著作物の剽窃《ひょうせつ》者を指していうときにも使用されるようだが、それでもかまわないか、と私が言ったら、馬場は即座に、いよいよ面白いと答えた。Le Pirate, ――雑誌の名はまずきまった。マラルメやヴェルレエヌの関係していた La Basoche, ヴェルハアレン一派の La Jeune Belgique, そのほか La Semaine, Le Type. いずれも異国の芸苑《げ
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