ない筈だし、――だいいち雜誌を出すなんて浮いた氣持ちになれるのがをかしいぢやないですか! 海賊。なにが海賊だ。好い氣なもんだ。あなた、あんまり馬場を信じ過ぎると、あとでたいへんなことになりますよ。それは僕がはつきり豫言して置いていい。僕の豫言は當りますよ。」
「でも。」
「でも?」
「僕は馬場さんを信じてゐます。」
「はあ、さうですか。」私の精一ぱいの言葉を、なんの表情もなく聞き流して、「今度の雜誌のことだつて、僕は徹頭徹尾、信じてゐません。僕に五十圓出せと言ふのですけれども、ばからしい。ただわやわや騷いでゐたいのですよ。一點の誠實もありません。あなたはまだごぞんじないかも知れないが明後日、馬場と僕と、それから馬場が音樂學校の或る先輩に紹介されて識つた太宰治とかいふわかい作家と、三人であなたの下宿をたづねることになつてゐるのですよ。そこで雜誌の最後的プランをきめてしまふのだとか言つてゐましたが、――どうでせう。僕たちはその場合、できるだけつまらなさうな顏をしてやらうぢやありませんか。さうして相談に水をさしてやらうぢやありませんか。どんな素晴らしい雜誌を出してみたところで、世の中は僕たち
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