のであるが、これだけは、いい得る。窓ひらく。好人物の夫婦。出世。蜜柑《みかん》。春。結婚まで。鯉《こい》。あすなろう。等々。生きていることへの感謝の念でいっぱいの小説こそ、不滅のものを持っている。
審判
人を審判する場合。それは自分に、しかばねを、神を、感じているときだ。
無間《むけん》奈落
押せども、ひけども、うごかぬ扉が、この世の中にある。地獄の門をさえ冷然とくぐったダンテもこの扉については、語るを避けた。
余談
ここには、「鴎外と漱石」という題にて、鴎外の作品、なかなか正当に評価せられざるに反し、俗中の俗、夏目漱石の全集、いよいよ華やかなる世情、涙出ずるほどくやしく思い、参考のノートや本を調べたけれども、「僕輩」の気折れしてものにならず。この夜、一睡もせず。朝になり、ようやく解決を得たり。解決に曰《いわ》く、時間の間題さ。かれら二十七歳の冬は、云々。へんに考えつめると、いつも、こんな解決也。
いっそ、いまは記者諸兄と炉をかこみ、ジャアナルということの悲しさについて語らん乎《か》。
私は毎朝、新聞紙上で諸兄の署名なき文章ならびに写
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