きりぎりす
太宰治
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)おわかれ致《いた》します
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)二|箇《か》年
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#「、」は底本では「、、」]
−−
おわかれ致《いた》します。あなたは、嘘《うそ》ばかりついていました。私にも、いけない所が、あるのかも知れません。けれども、私は、私のどこが、いけないのか、わからないの。私も、もう二十四です。このとしになっては、どこがいけないと言われても、私には、もう直す事が出来ません。いちど死んで、キリスト様のように復活でもしない事には、なおりません。自分から死ぬという事は、一ばんの罪悪のような気も致しますから、私は、あなたと、おわかれして私の正しいと思う生きかたで、しばらく生きて努めてみたいと思います。私には、あなたが、こわいのです。きっと、この世では、あなたの生きかたのほうが正しいのかも知れません。けれども、私には、それでは、とても生きて行けそうもありません。私が、あなたのところへ参りましてから、もう五年になります。十九
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