おしゃれ童子
太宰治
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)お洒落《しゃれ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)孤独|寂寥《せきりょう》の感に堪えかね、
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子供のころから、お洒落《しゃれ》のようでありました。小学校、毎年三月の修業式のときには必ず右総代として校長から賞品をいただくのであるが、その賞品を壇上の校長から手渡してもらおうと、壇の下から両手を差し出す。厳粛な瞬間である。その際、この子は何よりも、自分の差し出す両腕の恰好《かっこう》に、おのれの注意力の全部を集めているのです。絣《かすり》の着物の下に純白のフランネルのシャツを着ているのですが、そのシャツが着物の袖口《そでぐち》から、一寸《いっすん》ばかり覗《のぞ》き出て、シャツの白さが眼にしみて、いかにも自身が天使のように純潔に思われ、ひとり、うっとり心酔してしまうのでした。修業式のまえの晩、袴《はかま》と晴着と、それから仕立おろしの白いフランネルのシャツとを、枕もとに並べて置いて寝て、なかなか眠れず、二度も三度も枕からそっと頭をもたげては、枕もとの品品《しなじな》を見ました。ま
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