たり、「山もせにさける馬酔木《あしび》」と叙景せられたりするのを見れば、その花は「賑はしく麗しく且甚だ多く連らなりてさく花」と見えるから、馬酔木では一層似つかぬと守部は言ふけれども、馬酔木としてこそ実感そのままの描写である。昔は河内から伊勢路へかけて、馬酔木の花は大和一面にさきつらなつてゐたらしい。
 作品の解釈は、やはり実感を標準としなければ分るものでないと、私はその時固く信じたのである。



底本:「花の名随筆2 二月の花」作品社
   1999(平成11)年1月10日初版発行
入力:浅葱
校正:noriko saito
2005年5月14日作成
青空文庫作成ファイル:
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