まいましたけど、今さらどうしようもありませんわ。それにお母さんはもうずいぶんと長生きをしたんですものね。とにかく私どもは何の不足もございませんわ。」
「皆さん」ととかげが申しました、「あたくしは、皆さんのおっしゃることは一々ごもっともだと存じます! しかしまた、一面から申しますと……。」
けれどとかげは、一面から言うとどうなるのか、その先はとうとう言わずじまいになりました。なぜといって、そのとき不意に何ものかが、彼女の尻尾をぎゅっと地面へ押しつけたのを、感じたからでありました。
それは昼寝の夢からさめた馭者のアントンが、栗毛を迎えにやって来たのでありました。アントンが大きな長靴で、その会合の席へ踏み込んで、一座の者を押しつぶしてしまったのでありました。無事だったのは二匹のはえだけで、これはジャムだらけになって死んでしまった母親のからだをしゃぶりに、さっさと飛んで行きましたし、一ぽうとかげは命からがら、尾をちょん切られたままで逃げ出しました。アントンは栗毛のたてがみをつかまえて、庭から引き出して行きました。それはたるをつけて水をくみに行くためでした。道々アントンは、『ドオドてばよお、
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