何を云う? そげな事あッて好《よか》もんか! 骨に故障が有るちゅうじゃなし、請合うて助かる。貴様は仕合《しあわせ》ぞ、命を拾うたちゅうもんじゃぞ! 骨にも動脈にも触れちょらん。如何《どう》して此三昼夜ばッか活《いき》ちょったか? 何を食うちょったか?」
「何も食いません。」
「水は飲まんじゃったか?」
「敵の吸筒《すいづつ》を……看護長殿、今は談話《はなし》が出来ません。も少し後で……」
「そうじゃろうそうじゃろう寝ろ寝ろ。」
また夢に入《い》って生体《しょうたい》なし。
眼が覚めてみると、此処は師団の仮病舎。枕頭《まくらもと》には軍医や看護婦が居て、其外|彼得堡《ペテルブルグ》で有名な某《ぼう》国手《こくしゅ》がおれの傷《て》を負った足の上に屈懸《こごみかか》っているソノ馴染《なじみ》の顔も見える。国手は手を血塗《ちみどろ》にして脚《あし》の処で暫く何かやッていたが、頓《やが》て此方《こちら》を向いて、
「君は命拾《いのちびろい》をしたぞ! もう大丈夫。脚《あし》を一本お貰い申したがね、何の、君、此様《こん》な脚《あし》の一本|位《ぐらい》、何でもないさねえ。君もう口が利《き》け
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