職分だけは能《よ》く尽す。
颯《さっ》と朝風が吹通ると、山査子《さんざし》がざわ立《だ》って、寝惚《ねぼけ》た鳥が一羽飛出した。もう星も見えぬ。今迄薄暗かった空はほのぼのと白《しら》みかかって、※[#「車+(而+大)」、第3水準1−92−46]《やわらか》い羽毛《はね》を散らしたような雲が一杯に棚引き、灰色の暗霧《もや》は空へ空へと晴て行く。これでおれのソノ……何《なに》と云ったものかしら、生にもあらず、死にもあらず、謂わば死苦《しく》の三日目か。
三日目……まだ幾日《いくか》苦しむ事であろう? もう永くはあるまい。大層弱ったからな。此|塩梅《あんばい》では死骸の側《そば》を離れたくも、もう離れられんも知れぬ。やがておれも是になって、肩を比《なら》べて臥《ね》ていようが、お互に胸悪くも思はなくなるのであろう。
兎に角水は十分に飲むべし。一日に三度飲もう、朝と昼と晩とにな。
日の出だ! 大きく盆のようなのが、黒々と見ゆる山査子《さんざし》の枝に縦横《たてよこ》に断截《たちき》られて血潮のように紅《くれない》に、今日も大方熱い事であろう。それにつけても、隣の――貴様はまア何となる
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