丸《たま》に向い工合《ぐあい》、それのみを気にして、さて乗出《のりだ》して弥《いよいよ》弾丸《たま》の的となったのだ。
 それからの此始末。ええええ馬鹿め! 己《おれ》は馬鹿だったが、此不幸なる埃及《エジプト》の百姓(埃及軍《エジプトぐん》の服を着けておったが)、この百姓になると、これはまた一段と罪が無かろう。鮨《すし》でも漬《つ》けたように船に詰込れて君士但丁堡《コンスタンチノープル》へ送付られるまでは、露西亜《ロシヤ》の事もバルガリヤの事も唯噂にも聞いたことなく、唯行けと云われたから来たのだ。若《も》しも厭《いや》の何のと云おうものなら、笞《しもと》の[#「笞《しもと》の」は底本では「苔《しもと》の」]憂目《うきめ》を見るは愚かなこと、いずれかのパシャのピストルの弾を喰《く》おうも知れぬところだ。スタンブールから此ルシチウクまで長い辛い行軍をして来て、我軍の攻撃に遭《あ》って防戦したのであろうが、味方は名に負う猪武者《いのししむしゃ》、英吉利《イギリス》仕込《しこみ》のパテント付《づき》のピーボヂーにもマルチニーにも怯《びく》ともせず、前へ前へと進むから、始て怖気付《おじけづ》いて
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