どよく育ったやつは、ブラジルへ行ったってめったには見られませんよ。私どもは、植物たちが温室の中にいても、野育ちの場合とまったく同様に思うさま伸びられるように、知能を傾けたものですが、私にはどうやら、多少の成功を収めたように思われますよ。」
 そう言いながら、園長はさも得意そうな面もちで、ステッキをあげてその丈夫な木膚をたたいて見せるのでした。するとその音は、温室じゅうにびんびん響きわたるのでした。しゅろはこの打擲《ちょうちゃく》にたえかねて、葉をわなわなとふるわせるのでありました。おお、もしも彼女に声があったなら、どんなに物すごい忿怒《ふんぬ》の叫びを、園長は耳にしたことでありましょうか。
『あの人は、あたしがこうして伸びるのを、あの人を喜ばせるためだと思ってるんだわ』と、アッタレーアは心につぶやくのでした、『勝手にそう思うがいい!』
 そして彼女は、あらん限りの樹液をひたすら伸びるために使って、根や葉にまわる樹液をまで奪いながら、ぐんぐん伸びて行きました。時おり彼女には、円天井までの距離がいっこうに縮まらないような気がするのでした。すると彼女は力いっぱいに気ばるのです。そうこうする内
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