厚いガラスごしに、なにか閉じこめてある植物の姿が見えるのでありました。ひろびろした温室ではありましたが、それでも中にいる植物たちにとっては窮屈でありました。根という根は互いにまつわりついて、お互いの水気《みずけ》や養分を奪い合うのでした。木々の枝は、とても大きなしゅろの葉と入りまじって、それを押しひしゃげたり、裂きやぶったりしている一方では、自分たちもてんでに鉄のわくへのしかかって、曲がりくねったり折れたりしておりました。園丁たちは休む間もなしに木々の枝を刈り込んで、しゅろの葉の方は針金でからげ上げて、勝手きままに伸びさせないようにするのでしたが、それでも大してきき目はありませんでした。草木の身にしてみれば、ひろびろとした天地が、生まれ故郷が、そして自由がいるのでありました。その植物たちは熱帯地方の産で、栄耀《えよう》な暮らしに慣れた華奢《きゃしゃ》な生まれつきでしたから、故郷のことが忘れられず、南の空が恋しくてなりませんでした。ガラス張りの屋根がいくら透明だといっても、それは晴れわたった大空ではありません。冬になれば、時おりガラスの凍りつくこともあります。すると温室のなかはまっ暗にな
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