。この人はスコットランドのグラスゴーの機屋《はたや》の子でありまして、若いときからして公共事業に非常に注意しました。「どこかに私は」……デビッド・リビングストンの考えまするに……「どこかに私は一事業を起してみたい」という考えで、始めは支那《しな》に往きたいという考えでありまして、その望みをもって英国の伝道会社に訴えてみたところが、支那に遣《や》る必要がないといって許されなかった。ついにアフリカにはいって、三十七年間己れの生命をアフリカのために差し出し、始めのうちはおもに伝道をしておりました。けれども彼は考えました、アフリカを永遠に救うには今日は伝道ではいけない。すなわちアフリカの内地を探検して、その地理を明かにしこれに貿易を開いて勢力を与えねばいけぬ、ソウすれば伝道は商売の結果としてかならず来るに相違ない。そこで彼は伝道を止めまして探検家になったのでございます。彼はアフリカを三度縦横に横ぎり、わからなかった湖水もわかり、今までわからなかった河の方向も定められ、それがために種々の大事業も起ってきた。しかしながらリビングストンの事業はそれで終らない、スタンレーの探検となり、ペーテルスの探検
前へ 次へ
全82ページ中33ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
内村 鑑三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング