ツ、オーストリアの二国に南部最良の二州シュレスウィヒとホルスタインを割譲しました。戦争はここに終りを告げました。しかしデンマークはこれがために窮困の極に達しました。もとより多くもない領土、しかもその最良の部分を持ち去られたのであります。いかにして国運を恢復《かいふく》せんか、いかにして敗戦の大損害を償《つぐな》わんか、これこの時にあたりデンマークの愛国者がその脳漿《のうしょう》を絞《しぼ》って考えし問題でありました。国は小さく、民は尠《すくな》く、しかして残りし土地に荒漠多しという状態《ありさま》でありました。国民の精力はかかるときに試《た》めさるるのであります。戦いは敗れ、国は削《けず》られ、国民の意気鎖沈しなにごとにも手のつかざるときに、かかるときに国民の真の価値《ねうち》は判明するのであります。戦勝国の戦後の経営はどんなつまらない政治家にもできます、国威宣揚にともなう事業の発展はどんなつまらない実業家にもできます、難いのは戦敗国の戦後の経営であります、国運衰退のときにおける事業の発展であります。戦いに敗れて精神に敗れない民が真に偉大なる民であります[#「戦いに敗れて精神に敗れない
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