デンマルク国の話 信仰と樹木とをもって国を救いし話
内村鑑三

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)曠野《あれの》

|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)越王|勾践《こうせん》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、底本のページと行数)
(例)[#ここから引用文、3字下げ、3行アキ]
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[#ここから引用文、3字下げ、3行アキ]
曠野《あれの》と湿潤《うるおい》なき地とは楽しみ、
沙漠《さばく》は歓《よろこ》びて番紅《さふらん》のごとくに咲《はなさ》かん、
盛《さかん》に咲《はなさ》きて歓ばん、
喜びかつ歌わん、
レバノンの栄《さか》えはこれに与えられん、
カルメルとシャロンの美《うるわ》しきとはこれに授けられん、
彼らはエホバの栄《さかえ》を見ん、
我らの神の美《うる》わしきを視《み》ん。
           (イザヤ書三五章一―二節)
[#引用文終わり]


 今日は少しこの世のことについてお話しいたそうと欲《おも》います。
 デンマークは欧州北部の一小邦であります。その面積は朝鮮と台湾とを除いた日本帝国の十分の一でありまして、わが北海道の半分に当り、九州の一島に当らない国であります。その人口は二百五十万でありまして、日本の二十分の一であります。実に取るに足りないような小国でありますが、しかしこの国について多くの面白い話があります。
 今、単に経済上より観察を下しまして、この小国のけっして侮《あなど》るべからざる国であることがわかります。この国の面積と人口とはとてもわが日本国に及びませんが、しかし富の程度にいたりましてははるかに日本以上であります。その一例を挙《あ》げますれば日本国の二十分の一の人口を有するデンマーク国は日本の二分の一の外国貿易をもつのであります。すなわちデンマーク人一人の外国貿易の高は日本人一人の十倍に当るのであります。もってその富の程度がわかります。ある人のいいまするに、デンマーク人はたぶん世界のなかでもっとも富んだる民であるだろうとのことであります。すなわちデンマーク人一人の有する富はドイツ人または英国人または米国人一人の有する富よりも多いのであります。実に驚くべきことではありませんか。
 しからばデンマーク人はどうしてこの富を得たかと問いまするに、そ
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