を等分に見比べながら、ニコニコと何事をか語りかけてゐる。
 肥つた可愛い子!
『お子さんは何時お生れでしたの?』
『この一月ですよ』
『まあ大きい事、もうお誕生位に見えるのね、』
 私は心から可愛らしい子だと思つた。
 話はもうそれで途切れてしまつた。
 婦人は何處か一つ所を凝と無愛想に見つめてゐる。
 そして暫く時が經過した。
 すると突然疳高い聲が私の胸を貫いた。
『これツ、いまに呉れつちやうんです。』
 婦人は自分で自分にその勇氣と決斷とを示すやうに、こんな重大事を事もなげにいひ放つと、何かおちつかない風に、おどおどと私の顏を[#「顏を」は底本では「顏ち」]見てゐた。
 私にも何か急に重いものが、自分の方へ倒れがゝつてくるやうな息苦しさが感じられた。
『折角まあこんなにして、御親類へでもこのお子をおあげになるといふんですか?』
 對手の感情を支えるやうな氣持ちでいふ。
 すると婦人は、燻ゆぶつてゐるけれど玉子なりの眼鼻立ちの整つた面をふりあげて、
『いゝえ、これから搜さなきやならないんですよ、あなた……』
 訴へるやうな表情でいつた。
 赤ン坊は背中で機械の龜の子のやうに、ぷりぷ
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