そして病院《びやうゐん》がいふには、入院料《にふゐんれう》を持《も》つて來《こ》ない限《かぎ》り、決《けつ》して屍體《したい》は渡《わた》さないと。
それが宗教《しうけう》の病院《びやうゐん》だつた。
翌日《よくじつ》、同志達《どうしたち》は皆《みんな》から醵金《きよきん》した入院料《にふゐんれう》を持《も》つて、彼女《かのぢよ》の屍體《したい》を受《う》け取《と》りに來《き》た。すると、黒衣《こくい》の坊《ばう》さん達《たち》が、彼女《かのぢよ》の周圍《しうゐ》を取《と》り捲《ま》いたが、K氏《し》は斷然《だんぜん》それを拒絶《きよぜつ》した。
怜悧《れいり》な快活《くわいくわつ》な、大《おほ》きい眼《め》を持《も》つてゐた美《うつく》しい彼女《かのぢよ》、今《いま》は一人《ひとり》の女《をんな》として力限《ちからかぎ》り鬪《たゝか》つた。そして遂《つひ》に安《やす》らかに睡《ねむ》つた。
底本:「若草6巻2号」宝文館
1930(昭和5)年2月1日発行
入力:林幸雄
校正:大野裕
2001年1月17日公開
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネツトの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全5ページ中5ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
若杉 鳥子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング