う。君の不足な生活費から搾取するのもいやだ。等々々だから何でもいいから成《なる》べく実際的なものを入れてくれればいい。小説はこの頃余り読みたくないよ。よっぽど面白いのでなければ。「西部戦線」は面白くあったし、それに少し沈滞していた食欲を恢復させてくれたのは有り難かった。兵隊が書いた本だけあって、食うことばかり書いてあるんだもの。ベーコンや豌豆やチーズなんか盛んに出てくるじゃねえか、しかも、なかなか、うまそうに書いてある。ではまた来週!

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 手紙を、五月になってから二つ受け取った。第三信というのと第四信とである。
 ゴールキーの小説のような街で君が生活してること、めし屋で食事をすること等々、はなはだ愉快ではあったが、もうそんなことは当然すぎる話になってしまわなければならないぜ。現代支那語講座を受け取った。しかし、あれは毎月つづくらしいが、後はどうなんだろう。発音は此処にいては到底物になるべくもない。だが読むだけなら、字引さえあれば全くゾーサないことだ。一体この牢屋で読めるような「現代支那語」の書物が日本で発行されてるかしら? 誰かに聞いて見てくれ。ユーデット其の他宅下
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