ルクス主義者がいる。それ等の人々は現実に対する真面目な興味の欠けてることを示している。(大山郁夫がそれだったように)君はそんな風なマルクス主義者になってはならないし、又如何に上手に組み立てられていても、そうした事実を知らない人に対しては、その議論を絶対に信用してはならないのだ。
 まだ書きたいことがあるが書けなくなってしまった。宅下げしたのはドンキホーテ二冊、それから郵便で着物を送った。あのシーツの黒くなったことには、近来急速にプロレタリヤ化しつつある君も流石《さすが》に驚くだろう。今「西部戦線」を読んでいる。それからドイツ語の文法、君の送ってくれた奴をもう一度差し入れしてくれないか。然し手許《てもと》になければいいんだよ。では又。馬鹿に急いだので何も書けなかった。

       3

 此の間は思いがけない人にも逢ったし大変愉快だった。「理論的には大分しっかりして来たつもり」の人よ! 君は非常に丈夫そうに見えた。そう見えるだけではなくて本当に丈夫になったのだろう。処で宅下げの本はこの手紙が君の手許へ届くまでには三冊になる。前便で着物のことを書いておいたが二三日何だか寒いので見合わせ
前へ 次へ
全19ページ中7ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
若杉 鳥子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング