る次第になっているか見当もつかない俺は、うっかりすると頓珍漢なことをいいそうだからこれくらいで止めた。
要するに、君が非常にいい道を歩いているらしいから、非常に愉快だ。だが――僕が此処にいる間は手紙で色々なことを、余り具体的に知らせてくれない方がいいのではないかね? もっとそのかわり一般的なことを知らせてくれたまえ! それから「物価問題」その他が宅下げしてある。モップルの人に、今後時々行って見てくれるように頼んで置いてくれないか。モップルから入れてくれたドイツ語の本は、書き入れがあるので不許可になった。Kから入れてもらったものはKへ返さなければならないだろう。それも頼んでおいてくれ。
監獄の庭は色々なものがゴタゴタと成長し、日毎に丈が伸びて行って賑やかになった。小鳥にとっては此処は安全地帯だと見えて、時々東京には珍しい奴がやって来て鳴いている。俺が中学の一年生の時、聖書を習った女の先生は、丁度今の君と同じ年齢であったことを思い出した。なる程あんなものかなと思った。だが、その時分は、その女の児《こ》を立派な先生だと思って尊敬していたものだ。
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此の間は、なかな
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