ん》が剣《つるぎ》とお袍《うわぎ》を持って、御殿《ごてん》のきざはしの上に立《た》って、頼政《よりまさ》にそれを授《さず》けようとしました。頼政《よりまさ》はきざはしの下にひざをついてそれを頂《いただ》こうとしました。その時《とき》もうそろそろ白《しら》みかかってきた大空《おおぞら》の上を、ほととぎすが二声《ふたこえ》三声《みこえ》鳴《な》いて通《とお》って行きました。大臣《だいじん》が聞《き》いて、
[#ここから4字下げ]
「ほととぎす
名《な》をば雲井《くもい》に
あぐるかな。」
[#ここで字下げ終わり]
 と歌《うた》の上《かみ》の句《く》を詠《よ》みかけますと、
[#ここから4字下げ]
「弓張《ゆみは》り月《づき》の
いるにまかせて。」
[#ここで字下げ終わり]
 と、頼政《よりまさ》があとをつづけました。
 なるほど評判《ひょうばん》の通《とお》り、頼政《よりまさ》は武芸《ぶげい》の達人《たつじん》であるばかりでなく、和歌《わか》の道《みち》にも達《たっ》している、りっぱな武士《ぶし》だと、天子《てんし》さまはますます感心《かんしん》あそばしました。

     三

 頼政
前へ 次へ
全10ページ中8ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
楠山 正雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング