姨捨山
楠山正雄

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)信濃国《しなののくに》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)八月十五|夜《や》
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     一

 むかし、信濃国《しなののくに》に一人《ひとり》の殿様《とのさま》がありました。殿様《とのさま》は大《たい》そうおじいさんやおばあさんがきらいで、
「年寄《としより》はきたならしいばかりで、国《くに》のために何《なん》の役《やく》にも立《た》たない。」
 といって、七十を越《こ》した年寄《としより》は残《のこ》らず島流《しまなが》しにしてしまいました。流《なが》されて行った島《しま》にはろくろく食《た》べるものもありませんし、よしあっても、体《からだ》の不自由《ふじゆう》な年寄《としより》にはそれを自由《じゆう》に取《と》って食《た》べることができませんでしたから、みんな行くとすぐ死《し》んでしまいました。国中《くにじゅう》の人は悲《かな》しがって、殿様《とのさま》をうらみましたけれど、どうすることもできませんでした。
 すると、この信濃国《しなののくに》の更科《さらしな》という所《とこ
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