頭巾をふったり胸に手をあてたり、いくどもいくども、**投げキッスしてみせました。それは、ヨハンネスのためにかずかす幸福のあるように、とりわけ、たのしい旅のつづくようにいのってくれる、まごころのこもったものでした。
[#ここから5字下げ]
*家魔《いえおに》。善魔で矮魔《こびと》の一種。ニース(Nis)。人間の家のなかに住み、こどもの姿で顔は老人。ねずみ色の服に赤い先の尖った帽子をかぶる。お寺にはこの仲間が必ずひとりずついて塔の上に住み、鐘をたたいたりするという。
**じぶんの手にせっぷんしてみせて、はなれている相手にむかってその手をなげる形。
[#ここで字下げ終わり]
ヨハンネスは、これから、大きなにぎやかな世間へでたら、どんなにたくさん、おもしろいことがみられるだろうとおもいました。それで、足にまかせて、どこまでも、これまでついぞ来たこともない遠くまで、ずんずんあるいて行きました。通っていく所の名も知りません。出あうひとの顔も知りません。まったくよその土地に来てしまっていました。
はじめての晩は、野ッ原の、枯草を積んだ上にねなければなりませんでした。ほかに寝床といってはなかったの
前へ
次へ
全51ページ中7ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
楠山 正雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング