まっ赤な火ぐもでした。さて、そのいすは、乳いろしたガラスで、座ぶとんというのも、ちいさな黒ねずみがかたまって、しっぽをかみあっているものでした。いすの上に、ばらいろのくもの巣でおった天蓋《てんがい》がつるしてあって、それにとてもきれいなみどり色したかわいいはえ[#「はえ」に傍点]が、宝石をちりばめたようにのっていました。ところで、王冠をかぶって、王しゃくをかまえて、にくらしい顔で、王さまのいすにじいさんの魔法つかいが、むんずと座をかまえていました。魔法つかいはそのとき、王女のひたいにせっぷんすると、すぐわきのりっぱないすにかけさせました。やがて音楽がはじまりました。大きな黒こおろぎが、ハーモニカをふいて、ふくろうが太鼓のかわりに、はねでおなかをたたきました。それは、とぼけた音楽でした。かわいらしい、豆粒のような小鬼どもは、ずきんに鬼火をつけて、広間のなかをおどりまわりました。こんなにみんないても、たれにも旅なかまの姿はみえませんでしたから、そっと王さまのいすのうしろに立ってて、なにもかもみたりきいたりしました。さて、そこへひとかど、もったいらしく気どって、魔法御殿のお役人や女官たちが、
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