まは、れいのはくちょう[#「はくちょう」に傍点]から切りとった二枚の大きなつばさを、しっかりと、肩にいわいつけました。そうして、あのころんで足をくじいたおばあさんからもらった三本のむちのなかの、いちばんながいのをかくしにつっこむと、窓をあけて、町の丘から、お城のほうへ、ひらひらとんでいきました。それから王女の寝べやの窓下に来て、そっと片すみにしのんでいました。
町はひっそりしていました。ちょうど時計は十二時十五分まえをうったところです。ふと窓があいたとおもうと、王女はながい白マントの上に、まっ黒なつばさをつけて、ひらりと舞い上がりました。町の空をつっきって、むこうの大きな山のほうへとんでいきました。ところで、旅なかまは、王女に気づかれないように、からだをみえなくしておいて、そのあとを追いながら、王女をむちでうちました。うたれるそばから、ひどく血がでました。ほほう、たいへんな空の旅があったものですね。風が王女のマントを、それこそ大きな舟の帆のように、いっぱいにふくらませて行く上から、ほんのりとお月さまの光がすけてみえました。
「おお、ひどいあられだ、ひどいあられだ。」
王女は、むちの
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