りっぱな金かんむりをたかくささげながら「どうぞ、わたくしからこのかんむりをおとりあげください、そのかわり、夫にも、家来たちにも、どうぞお薬をぬっていただけますように。」といのりました。そうきいて、この人形芝居の親方は、きのどくに、人形たちが、ふびんでふびんでついいっしょに泣きだしました。親方はそこで、旅なかまにたのんで、あすの晩の興行《こうぎょう》のあがりをのこらずさしあげます。どうぞ、せめて四つでも五つでも、なかできりょうよしな人形にだけでも、こうやくを塗ってやってはもらえますまいかと、くれぐれたのみました。ところで、旅なかまは、ほかのものは一切《いっさい》いらない、わたしのほしいのは、そのおまえさんの腰につるしている剱だけだといいました。そうして、剱を手に入れると、六つの人形のこらずにこうやくをぬってやりました。すると人形たちは、さっそくおどりだしました。しかもその踊のうまいこと、そこにみていたむすめたちが、生きている人間のむすめたちのこらずが、すぐといっしょにおどりださずにはいられないくらいでした。するうち、御者と料理番のむすめも、つながっておどりだしました。給仕人もへや女中も、
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