いながら、そのまま帰《かえ》って行こうとしました。あいにく雨《あめ》が強《つよ》くなって、風《かぜ》が出てきました。真っ暗《くら》な中で綱《つな》は、しきりに馬《うま》を急《いそ》がせました。
ふと綱《つな》の乗《の》っていた馬《うま》がぶるぶると身《み》ぶるいをしました。そのとたん、ずしんと何《なに》か重《おも》たいものが、後《うし》ろの鞍《くら》の上に落《お》ちたように思《おも》いました。おやと思《おも》って、綱《つな》がそっとふり向《む》くと、なんだかざらざらした堅《かた》いものが顔《かお》にさわりました。それといっしょにいきなり後《うし》ろから襟首《えりくび》をつとつかまれました。
「とうとう出た。」
綱《つな》はこう思《おも》って、襟首《えりくび》を押《お》さえられたまま鬼《おに》の腕《うで》をつかまえて、
「ふん、きさまが羅生門《らしょうもん》の鬼《おに》か。」
といいました。
「うん、おれは愛宕山《あたごやま》の茨木童子《いばらぎどうじ》だ。毎晩《まいばん》ここへ出て人をとるのだ。」
と、鬼《おに》はいうなり綱《つな》の襟首《えりくび》をもって空《そら》の上に引《
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