ぱな行いや、みんながみたりおぼえたりしたいろいろのことでした。それから、絵本のなかのものは、なにもかも生きていて、小鳥たちは歌をうたうし、いろんな人が本からぬけてでて来て、エリーザやおにいさまたちと話をしました。でもページをめくるとぬけだしたものは、すぐまたもとへとんでかえっていきますから、こんざつしてさわぐというようなことはありませんでした。
 エリーザが目をさましたとき、お日さまは、もうとうに高い空にのぼっていました。でも高い木立《こだち》が、あたまの上で枝をいっぱいひろげていましたから、それをみることができませんでした。ただ光が金《きん》の紗《しゃ》のきれを織るように、上からちらちら落ちて来て、若いみどりの草のにおいがぷんとかおりました。小鳥たちは肩のうえにすれすれにとまるようにしました。水のしゃあしゃあながれる音もきこえました。これはこのへんにたくさんの泉があって、みんな底にきれいな砂のみえているみずうみのなかへながれこんでいくのです。みずうみはふかいやぶにかこまれていましたが、そのうち一箇所に、しか[#「しか」に傍点]が大きなではいり口をこしらえました。エリーザはそこからぬけ
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