とても魔法の力にはおよばなかったのです。
どこまでもいじのわるいお妃は、それをみると、こんどはエリーザのからだをくるみの汁でこすりました。それはこの王女を土色によごすためでした。そうして顔にいやなにおいのする油をぬって、うつくしい髪の毛も、もじゃもじゃにふりみださせました。これでもう、あのかわいらしいエリーザのおもかげは、どこにもみられなくなりました。
ですから、おとうさまは王女をみると、すっかりおどろいてしまいました。そうして、こんなものはむすめではないといいました。もうたれも見分けるものはありません。知っているのは、裏庭にねている犬と、のきのつばめだけでしたが、これはなんにももののいえない、かわいそうな鳥けものどもでした。
そのとき、かわいそうなエリーザは、泣きながら、のこらずいなくなってしまったおにいさまたちのことをかんがえだしました。みるもいたいたしいようすで、エリーザは、お城から、そっとぬけだしました。野といわず、沢といわず、まる一日あるきつづけて、とうとう、大きな森にでました。じぶんでもどこへ行くつもりなのかわかりません。ただもうがっかりしてつかれきって、おにいさま
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