ました」]。
「あの子の胸の上にのっておやり。そうすると、あの子にわるい性根《しょうね》がうつって、そのためくるしいめにあうだろうよ。」
こういって、お妃は、三びきのひきがえるを、きれいなお湯のなかにはなしますと、お湯は、たちまち、どろんとしたみどり色にかわりました。そこでエリーザをよんで、着物をぬがせて、お湯のなかにはいらせました。エリーザがお湯につかりますと、一ぴきのひきがえるは髪の上にのりました。二ひきめのひきがえるはひたいの上にのりました。三びきめのひきがえるは胸の上にのりました。けれどもエリーザはそれに気がつかないようでした。やがて、エリーザがお湯から上がると、すぐあとにまっかなけし[#「けし」に傍点]の花が三りん、ぽっかり水の上に浮いていました。このひきがえるどもが、毒虫でなかったなら、そうしてあの魔女の妃がほおずりしておかなかったら、それは赤いばら[#「ばら」に傍点]の花にかわるところでした。でも、毒があっても、ほおずりしておいても、とにかくひきがえるが花になったのは、むすめのあたまやひたいや胸の上にのったおかげでした。このむすめはあんまり心がよすぎて、罪がなさすぎて、
前へ
次へ
全44ページ中6ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
楠山 正雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング