ろう[#「くろう」に傍点]もくったくもありませんでしたから、まっさきにおなかがすいて、倒《たお》れそうにおもいました。女官|頭《がしら》は、ほかの人たちとおんなじに、ひどくおなかがへって、がまんできないほどでしたから、だしぬけに大きな声で、お姫さま、お夕飯《ゆうはん》のおしたくができましたと、申しあげました。王子は、王女のお姫さまを助けて立ちあがらせました。お姫さまは、ずいぶんりっぱなふうをしていましたが、なにしろそれは百年まえにはやった、王子のひいおばあさんの着物とおなじようだということを、さすがにお姫さまにむかっていうことは、えんりょしていました。いくら流行《りゅうこう》おくれなふうはしていても、それがために、王女の美しさにも、かわいらしさにも、いっこう、かわりはなかったのですからね。
さて、ふたりは、鏡《かがみ》の間《ま》に出て行きました。そこで夕飯《ゆうはん》の食卓《しょくたく》について、王女づきの女官《じょかん》たちがお給仕《きゅうじ》に立ちました。そのあいだ、バイオリンだの、木笛《きぶえ》だのが、百年まえの古い曲《きょく》をかなでました。それは、百年まえの古い曲にちがいあ
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