たい》そうおおこりになって、いったん帰《かえ》りかけた蛙《かえる》をお呼《よ》びもどしになりました。そして、蛇《へび》に向《む》かって、
「蛙《かえる》がおしりをしゃぶれといったのならかまわない。これから、おなかのへった時《とき》には、いつでも蛙《かえる》のおしりからまるのみにのんでやるがいい。」
 とおっしゃいました。そこで蛇《へび》は大《たい》そうよろこんで、いきなり蛙《かえる》をつかまえて、おしりからひとのみにのんでしまいました。これで蛇《へび》の食《た》べ物《もの》がきまったので、神《かみ》さまがお帰《かえ》りになろうとしますと、小さな声《こえ》で、
「もし、もし。」
 と呼《よ》びながら、地《じ》の中から出て来《き》たものがありました。それは、目の見《み》えないみみずで、目が不自由《ふじゆう》なものですから、こんなに来《く》るのに手間《てま》をとってしまったのです。
「もし、もし、神《かみ》さま、わたくしは、何《なに》を食《た》べたらよろしゅうございましょうか。」
 とみみずがいいました。神《かみ》さまのお手には、なんにももう残《のこ》ってはいませんでした。そこで、めんどうくさくなって、
「土《つち》でも食《た》べていろ。」
 とおっしゃいました。すると、みみずは不足《ふそく》そうな顔《かお》をして、
「土《つち》を食《た》べてしまったら、何《なに》を食《た》べましょうか。」
 としつっこくたずねました。すると神《かみ》さまはかんしゃくをおおこしになって、
「夏《なつ》の炎天《えんてん》にやけて死《し》んでしまえ。」
 とおしかりつけになりました。そこで、みみずは土《つち》を食《く》って生《い》き、夏《なつ》の炎天《えんてん》に出ると、やけ死《し》んでしまうのだそうです。

     すずめときつつき

 むかし、すずめがせっせと鏡《かがみ》に向《む》かって、おはぐろをつけていますと、おかあさんが死《し》んだという知《し》らせが来《き》ました。びっくりして、おはぐろを半分《はんぶん》つけかけたまま、すずめはおかあさんの所《ところ》へ駆《か》けつけて行《い》きました。神《かみ》さまはすずめの孝行《こうこう》なことをおほめになって、
「すずめよ、毎年《まいねん》これから稲《いね》の初穂《はつほ》をつむことを許《ゆる》してやるぞ。」
 とおっしゃいました。でもお
前へ 次へ
全17ページ中12ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
楠山 正雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング