猫の草紙
楠山正雄

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)京都《きょうと》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一|日《にち》
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     一

 むかし、むかし、京都《きょうと》の町《まち》でねずみがたいそうあばれて、困《こま》ったことがありました。台所《だいどころ》や戸棚《とだな》の食《た》べ物《もの》を盗《ぬす》み出《だ》すどころか、戸障子《としょうじ》をかじったり、たんすに穴《あな》をあけて、着物《きもの》をかみさいたり、夜《よる》も昼《ひる》も天井《てんじょう》うらやお座敷《ざしき》の隅《すみ》をかけずりまわったりして、それはひどいいたずらのしほうだいをしていました。
 そこでたまらなくなって、ある時《とき》お上《かみ》からおふれが出て、方々《ほうぼう》のうちの飼《か》い猫《ねこ》の首《くび》ったまにつないだ綱《つな》をといて、放《はな》してやること、それをしない者《もの》は罰《ばつ》をうけることになりました。それまではどこでも猫《ねこ》に綱《つな》をつけて、うちの中に入《い》れて、かつ節《ぶし》のごはんを食《た》べさせて、だい
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