田村麻呂《たむらまろ》はかしこまって、さっそく兵隊《へいたい》を揃《そろ》える手《て》はずをしました。いよいよ出陣《しゅつじん》の支度《したく》ができ上《あ》がって、京都《きょうと》を立《た》とうとする朝《あさ》、田村麻呂《たむらまろ》はいつものとおり清水《きよみず》の観音様《かんのんさま》にお参《まい》りをして、
「どうぞこんどの戦《いくさ》に首尾《しゅび》よく勝《か》って、天子《てんし》さまの御心配《ごしんぱい》の解《と》けますように。」
 と熱心《ねっしん》にお祈《いの》りをして、奥州《おうしゅう》へ向《む》かって立《た》って行きました。
 奥州《おうしゅう》へ着《つ》いていよいよ高丸《たかまる》と戦《いくさ》をはじめてみますと、なるほど向《む》こうは名高《なだか》い荒《あら》えびすだけのことはあって、一|度《ど》戦《いくさ》をしかけたら勝《か》つまでは決《けっ》してやめません。味方《みかた》が残《のこ》らず討《う》たれて最後《さいご》の一人《ひとり》になるまでも決《けっ》して後《あと》へは退《ひ》きません。親《おや》が討《う》たれれば子が進《すす》み、子が討《う》たれれば親《お
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