し》の下に降《お》りて、波《なみ》を切《き》って湖《みずうみ》の中に入《はい》って行きました。藤太《とうだ》もその後《あと》からついて行きました。しばらくすると向《む》こうにりっぱな門《もん》が見《み》えて、その奥《おく》に金銀《きんぎん》でふいた御殿《ごてん》の屋根《やね》があらわれました。るりをしきつめた道《みち》をとおって、さんごで飾《かざ》った玄関《げんかん》を入《はい》って、めのうで堅《かた》めた廊下《ろうか》を伝《つた》わって、奥《おく》の奥《おく》の大広間《おおひろま》へとおりました。そこのすいしょうをはりつめた欄干《らんかん》から、湖水《こすい》を透《す》かしてすぐ向《む》こうに三上山《みかみやま》がそびえていました。
「むかでの出ますにはまだ間《ま》がございます。」
 と龍王《りゅうおう》はいって、藤太《とうだ》をくつろがせ、いろいろとごちそうをしているうちに時刻《じこく》がたって、だんだん暗《くら》くなって来《き》ました。

     二

 すると暗《くら》くなるに従《したが》って、龍王《りゅうおう》の顔《かお》が青《あお》くなって来《き》ました。
「ああ、もうそ
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