「桃太郎《ももたろう》さん、桃太郎《ももたろう》さん、どちらへおいでになります。」
 とたずねました。
「鬼《おに》が島《しま》へ鬼《おに》せいばつに行くのだ。」
「お腰《こし》に下《さ》げたものは、何《なん》でございます。」
「日本一《にっぽんいち》のきびだんごさ。」
「一つ下《くだ》さい、お供《とも》しましょう。」
「よし、よし、やるから、ついて来《こ》い。」
 きじもきびだんごを一つもらって、桃太郎《ももたろう》のあとからついて行きました。
 犬《いぬ》と、猿《さる》と、きじと、これで三にんまで、いい家来《けらい》ができたので、桃太郎《ももたろう》はいよいよ勇《いさ》み立《た》って、またずんずん進《すす》んで行きますと、やがてひろい海《うみ》ばたに出ました。
 そこには、ちょうどいいぐあいに、船《ふね》が一そうつないでありました。
 桃太郎《ももたろう》と、三にんの家来《けらい》は、さっそく、この船《ふね》に乗《の》り込《こ》みました。
「わたくしは、漕《こ》ぎ手《て》になりましょう。」
 こう言《い》って、犬《いぬ》は船《ふね》をこぎ出《だ》しました。
「わたくしは、かじ取《と
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