を上《あ》げますから。」
「それはありがたいな。何《なん》だね、そのいいものというのは。」
こういいながら、おじいさんはわらじをぬいで、上に上《あ》がりました。その間《ま》に、おばあさんは戸棚《とだな》の中からさっきの桃《もも》を重《おも》そうにかかえて来《き》て、
「ほら、ごらんなさいこの桃《もも》を。」
と言《い》いました。
「ほほう、これはこれは。どこからこんなみごとな桃《もも》を買《か》って来《き》た。」
「いいえ、買《か》って来《き》たのではありません。今日《きょう》川で拾《ひろ》って来《き》たのですよ。」
「え、なに、川で拾《ひろ》って来《き》た。それはいよいよめずらしい。」
こうおじいさんは言《い》いながら、桃《もも》を両手《りょうて》にのせて、ためつ、すがめつ、ながめていますと、だしぬけに、桃《もも》はぽんと中から二つに割《わ》れて、
「おぎゃあ、おぎゃあ。」
と勇《いさ》ましいうぶ声《こえ》を上《あ》げながら、かわいらしい赤《あか》さんが元気《げんき》よくとび出《だ》しました。
「おやおや、まあ。」
おじいさんも、おばあさんも、びっくりして、二人《ふたり》い
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