長い名
楠山正雄

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)ほんとうの名《な》を

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)二|度《ど》めの
−−

     一

 ちょんきりのちょんさんのほんとうの名《な》をだれも知《し》りませんでした。何《なん》でも亡《な》くなったこの子のおかあさんが、この子の運《うん》がいいように何《なに》かいい名前《なまえ》をつけようと、三日《みっか》三晩《みばん》考《かんが》えぬいて、病気《びょうき》になって、いよいよ目をつぶるというときに、かすかな声《こえ》で、
「ああ、やっと考《かんが》えつきました。この子の名《な》はちょん。」
 といいかけたなり、もう口が利《き》けなくなってしまったのです。そこでみんなはしかたがないので、「ちょん」きりで、名前《なまえ》が切《き》れて無《な》くなってしまったというので、「ちょんきりのちょんさん」とあだ名《な》を呼《よ》ぶようになりました。そのあだ名《な》がほんとうの名前《なまえ》になって、いつまでたっても、その子はちょんきりのちょんさんでした。
 しばらくたって、ちょんきりのちょんさん
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