りの丘も、それから、おさかなのしっぽももっていないくせに、水におよげるかわいらしいこどもたちのことをも、このひいさまは、いつまでもわすれることができませんでした。
 さて、四ばんめのおねえさまは、それほどむこうみずではありませんでしたから、そこで、ひろい大海のまんなかに居ずくまったままでしたが、でもそこがどこよりもいちばんうつくしかったと話しました。もうぐるりいちめん、なんマイルと先の知れないとおくまで見はらせて、あたまの上の青空は、とほうもなく大きなガラス鐘のようなものでした。船というものもみました。でも、それはただ遠くにはなれていて、まるでかもめのようにみえていました。それからおどけもののいるか[#「いるか」に傍点]が、とんぼがえりしたり、大きなくじらが鼻のあなから、しおをふきだして、そのへんいちめんに、なん百とない噴水がふきだしたようでした。
 こんどは、五ばんめのおねえさまの番になりました。このひいさまは、おたん生日が、ちょうど冬のあいだでしたので、ほかのおねえさまたちのみなかったものをみました。海はふかいみどり色をたたえて、その上に、氷の山がまわりをとりまいて浮いていました。
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